第4回愛媛救友会(松山大会)


第4回愛媛救友会(松山大会)・目次

1)デモンストレーション
(1)特定行為(松山市消防局)
(2)ショックパンツ(東温消防本部)
(3)異物除去(上浮穴消防本部)

2)自由演題

(1) 愛媛県立中央病院における緊急コール
     (愛媛県立中央病院 本田るい)
(2) 複数傷病者の救急活動  
     (伊予消防本部 生駒 隆)
(3) 東宇和消防の救急状況について
     (東宇和消防本部 中村 久)
(4) コンビチューブが有効だった救急事例  
     (今治消防本部 石川佳二)
(5) 海上保安庁について
     (松山海上保安部 渡部博文)

3) 特別講演:救急医療の近未来

(愛媛大学医学部救急医学教授 白 川 洋 一先生)


(4)演 題 「コンビチューブが有効だった救急事例」

演 者    今治消防本部  石 川 佳 二

 交通事故による頭部外傷で、現着時CPA状態であり従来の応急処置では気道確保が困難と思われる患者に、特定行為実施(コンビチューブによる気道確保)により換気良好となり、病院収容後一時的に心機能が回復したという事例がありましたので報告します。

 事故概要は、50 バイクが路上に立っていた歩行者(82歳女性)を後ろから跳ねたもので、活動内容は次ぎのとおりです。

        15:39           覚知
        15:44           現場到着
                            観察、状況聴取、口腔内清拭吸引、CPA状態、CPR開始
        15:47 ───┬── 医師へ連絡、指示を受ける
        15:49 ───┼── 車内収容後コンビチューブSAにて気道確保
                   │         静脈路確保
        16:04 ───┼── 現場発  CPR継続
        16:08 ───┼── 病院到着(DOA)、医師引き継ぎ
                   │         気管内挿管、薬剤投与
        16:18 ───┼── 心拍開始、洞調律
        18:01 ───┼── 死亡
                    │
 覚知より5分後に現場到着すると、道路中央に仰臥位にて倒れており、頭部、口腔内より出血あり。交 通量は少なくその場で現場観察を行う。観察内容は次のとおりであった。

        意識レベル:300
        呼吸      :停止  
        脈拍      :頸動脈触知できず
        瞳孔      :左右散大(5mm)
        対光反射  :なし
        外傷      :後頭部打撲挫創

    失禁   :なし
        顔貌      :表情なし、蒼白
 救急処置は、気道確保を行うため口腔内を確認すると、多量の血液が溜まっており、頚椎損傷に気を付けながら顔を横に向け、すでに固まり始めていた血液を指でかき出した後、吸引器で吸引しバッグマスクにて送気を行うが換気不十分であった。

 隊長指示により、救命士は自動車電話で心電図伝送の受信装置設置病院である県立今治病院ICUに連絡し、ドクターに事故の状況報告を行い特定行為の指示を受ける。

 救急車は直近にあり、住民も多数集まっていたので車内収容後に処置を行うことにした。CPRを継続しながら車内収容、傷病者にモニター電極を取り付け心電図のフラットを確認する。

 ドクターの指示内容は、静脈のうっ血が確認できたため静脈路確保と気道確保の2項目実施である。まず、喉頭鏡を使用し喉頭展開を行う。食道、気管が十分に視認でき、食道よりの出血を確認したため吸引を行うが出血は止まらず、この出血が換気不良の原因の一つであると思われた。

 吸引するが出血が多いため出血のある状態でコンビチューブSAを挿入することにした。食道が視認できているためスムーズに挿入でき換気良好となる。この時気管も十分に視認できており気管のほうに挿入できればなあという思いがよぎった。CPRを再開し、オートベントに切り替え効果確認するも心電図はフラット。CPA状態変わらず。

 救命処置実施状況等をドクターに説明し、「搬送は救急当番医へ」の指示で搬送する。  病院収容後、ドクターが気管内挿管をするため、コンビチューブのカフエアーを抜くとチューブ内を通り血液が噴き出た。食道内に多量の血液が溜まっていたものと推察する。

 その後、気管内挿管、薬剤投与等の処置が行われ、約10分後医師引き継ぎも終わり帰署しようとした時、洞調律の波形がモニターに出現した。予後調査では洞調律は約15分続いたが病院収容後の約2時間後、18時01分死亡確認。傷病名は出血性ショッック、頭蓋底骨折でした。ドクターの説明では口腔内よりの出血は内蔵損傷等ではなく、頭蓋底骨折による出血が食道内に入りそれが逆流していたとのことである。

 現場では、このままでは換気ができないと判断し、まず出血を止めようと思いコンビチューブを選択しましたが、出血原因が分からず判断が困難であった。医師によると、コンビチューブ使用の判断は適切であったとのことです。しかし、もっと適切で確実な処置があったのでは、と確信しています。皆さんはどう思われますか。

 それと、もう一つ気になるのが血液による気道閉塞です。血液の塊が口の中に多量にあった事です。バイスタンダーが少しでも顔を横に向けていれば、現着時CPA状態にはなってなかったように思います。住民の応急手当の大切さを知る一つの事例でもありました。

 今回の救急活動に関してアドバイスがあればよろしくお願いします。また、次の二点についても助言をお願いします。溺水時に多量の水を飲んでいるときのコンビチューブの有効性、および適性について。コンビチューブと気管内挿管使用の症例調査結果でいずれも酸素化は良好に改善されるが、二酸化炭素排泄という意味でコンビチューブが有効でないのはどうしてですか。

(助言者 上 田 暢 男)

 3人の方のお話しをお聞きしまして、私は中央病院の三次救急で隊員の方とお話しする機会はございましたが、病院以前の現場での救急隊の生の声を聞かせて頂いたのは有り難いことだと逆に感謝申し上げます。

 デモンストレーションがございました。これも我々にとって、ある程度教育する立場ということもわきまえてはございますが、私も色々な所でお話しする機会もございますが、むしろあのデモンストレーションは医療を担当している医者に、逆に指導すべきではないか。お医者さんは知識としてもっている方は多いのですが、あそこまで手順どおりやれる方がはたして何人いらっしゃるか。ということをいつも考えています。だから救急医療は奇麗ごとではない。と医師自からが謙虚に勉強してほしいということを感じました。

 我々の病院でもそうですが、専門分野化されますとそういった傾向。例えば心臓を中心とした先生、呼吸器を中心とした先生等はその専門領域については誰よりも優れた能力をもっていますが、トータルの患者さんを診るという面での欠如が批判もされていますし実際そうである。そのあたり生きるか死ぬかの医療の現場での救急隊員の方の先程のシュミレーション、あるいは今のお話しに感銘を受けました。

 助言という大それたことを申し上げる事は出来ませんが、まず演題2の「複数傷病者の救急活動」に関しまして、いろんな問題点を提示されていると感じました。

 一つはマンパワーの問題。この場合は3名の受診者がおられて2名は死亡、1人は重症ということですが、現場で多数の患者があるときに、現場で救急隊員がどのように活動するかといったことを提示されたのではないかと思います。現場到着時の患者さんの客観的な状況把握は的確に捕らえているが、ここでの問題はもっと大きな事故が起こったときにどうするか。優先順位はどうするか。身近かな問題として改めて問題提起されたと思います。

 現場でのいろいろな事を想定して訓練されているでしょうが、やじ馬の問題だとか、道路の渋滞、情報収集も今回足りなかったのかどうか分かりませんが、これは全ての領域に通じて我々のようなある程度専門病院もそうですが情報収集ということも問題としてあらためて問われていると感じました。その問題につきましては、今治の石川さんのお話しのCPAの状態に対する特殊救急処置としての静脈確保と、今日の話題になりましたコンビチューブを挿管するときの医師の指示では今治地区では、うまく医療機関と連携が出来ているということは当然の事だと私は思いますけれども現実の問題としてまだまだ出来ていないということに関して深い感銘を受けました。

 情報収集そして特殊行為の場合の医療機関との正確な情報伝達、ということが今後大きな問題になるのではないかと考えました。

 それが題席に対する私の捕らえ方で、皆様方が問題点としてご指摘なさった事に対する回答にはならないと思いますが。逆にこういった救急医療の現場を通じて一緒になって行政の方とこういったことが問題であるからこそ、この辺りを十分実のある救急医療を実現したいと提言していくべきではないかと感じました。

 東宇和郡の状況、地図をもって説明していただきましたが、確かに愛媛県の人でも宇和郡というのがわかりません。東と西と南と北がよくわかりません。私も地元の人間ですがこちらへ帰って来てから、南宇和と北宇和と何が何やらさっぱり分からなかったです。大野が原と野村町の地理的関係、今日あらためて聞きますと約1時間かかる。救急医療の時間的な要素というのは極めて重要でありますけれども、その点に関して東宇和郡の方の苦労というものを見せて頂いたと思います。

 いろいろ考えても難しい点はございますけれども、さらにヘリ輸送という問題がこういったことを通じてより今後具体化しなければならないと思います。さらに中村さんが強調された情報伝達。例えば、医師の指示というところですけれども、これはいつも引っ掛かりますけれども、強い要望があったということを私たちは身をもって感じておりますし、どう具体化するか。南予地区に南予救命救急センターがございますので、その地域における具体的な行動を通じて、いかに適切な現場から医師の指示をもらって、医療行為が出来るかということを具体化していただければと思います。非常に生々しい苦労という事をあらためてこのお話しから感じ取りました。

 コンビチューブの問題ですが、石川さんよく勉強されているし具体的に問題点を提示されました。発症から死亡に至るまでの克明な記録を見せていただきまして、そして今の救急医療で使う言葉というものが的確に使われている。ということがやはりこの辺り、救急救命士の方がいかに真剣に現場で取り組んでいるかと痛切に感じました。病態が比較的特殊な病態でございますので、難しい質問をお受けしていますが、溺水時における多量の水を飲んでいるときのコンビチューブの有効性及び適性は非常に難しいです。ただ溺水は私共もかなり経験しております。愛媛大学救急部の先生が私共のかなりの症例をまとめてお話しされております。

 溺水の場合には原因のいかんを問わず結果的に怖いのは、ブレーン・アノキシア(脳の酸欠状態)による障害ではないかと思います。いかに有効に酸素を投与するかということなので、我々病院に来たときに今はCPAと言いますが、結果的にはブレーン・アノキシアになっていないというのが絶対条件ではないかと思います。その為にはこの方法が適当か不適当かは別としても、換気を十分してやるということは必須条件ではないかと思います。ただ、肺胞内に水が溜まっている場合も海水の場合と真水の場合の二通りございまして、海水の場合は浸透圧の問題があって肺胞内に一応水が一杯溜まっている、いわゆるジャブジャブの状態である場合に換気して果たして換気効率があるのか。こういったことがこの方法でどうなのかということが問われているのかも知れませんが、とにかく換気をするということには問題は無いと私は思います。この方法は例えば私たちが挿管をして呼吸管理をする場合に、救急救命士に許可された方法というのは医師はほとんど経験ないわけですね。とりあえず挿管はして、十分な換気をして最小限ブレーン・アノキシアを起こさないだけの酸素を投与するのが原則ではないかと思います。逆に真水の場合であれば、コラップスといいますか潰れてしまう状態を一応考えているわけです。結果的には血流と酸素の不均等が最終的には有効な酸素化が得られない原因だということになって、換気をするをすることに関しては絶対必要ではないかと。この方法が有効であるかどうか私もよく経験ございません。それと、この様な症例のときに炭酸ガスがうまく排出されないというのは当然だろうと思います。これはやはり、石川さんがくやしかったと。気管も見える。しかしあの気管の中に管を入れてはいけないのだと。食道まで入れてそこで閉鎖してしまったというジレンマはいやというほど分かります。此処から先の問題になりますと、これだけのものをトレーニングされた方にとっては挿管は当然やるべきであろうと、そういった方向で救急医学会を中心に動いてほしいというふうに考えます。ところで酸素は十分入りますけれど、炭酸ガスはあの方法では十分吐き出せないというのは理論的にも正しいと思います。これは文献その他にもそのように言われているのではないかと思います。

 皆さん方の現場でのいろいろなお話しをお聞きしまして、逆にわたくし感激いたしております。こちらから感謝いたしたいとおります。

 十分なお返事にはなっていないかとは思いますけれども、今わたくしがお答えしたことも含めまして、皆さん方でいろいろご審議いただければと思います。


(5)演 題 「海上保安庁について」

   演 者    松山海上保安部  渡 部 博 文

 お手元の海上保安庁のパンフレットを見ていただきながらお耳だけ貸して頂きたいと思います。 海上保安庁の組織については、以前高校生にアンケートを取った事がありますが、6割の高校生が知らないという結果であります。高校生が知らないという事は、当然一般の方も多くの方が知らないと思いますので簡単に説明したいと思います。

 今年の1月2日、日本海で起こりましたロシア船ナホトカ号海難流出事故により、海上保安庁という名前を最近聞かれた方も多いと思います。

 海上保安庁は、海上における人命、財産の保護、治安の維持を目的として1948(昭和23年)5月に創立され、海上犯罪の取り締まりや、海難救助などの警備救難業務。海洋調査や水路測量などの水路業務。光や電波の灯台の建設や保守運用などの航路標識業務。といった海の安全を確保するための幅広い業務を実施している運輸省の外局で「安全で明るく美しい海をいつまでも」という言葉を合言葉にし、24時間休みなく活動を実施しております。自衛隊と混同される方が多いようですがあくまでも運輸省管轄の機関であります。

 海上保安庁の職員は、事務関係を除きましてほとんど海上保安官と呼ばれております。簡単に言いますと「海のお巡りさん」というのが分かりやすいと思います。

 海上保安庁の組織につきましては、東京霞ヶ関に本庁があります。全国を11の管区に分け、それぞれの管区海上保安本部の下に海上保安部、海上保安署、航空基地、水路観測所、航路標識事務所等があります。独自の機関としまして、広島県呉市に海上保安大学校、京都府舞鶴市に海上保安学校、北九州市に門司分校、宮城県に宮城分校があります。宮城分校につきましては、海上保安庁の航空要員の養成を行う学校で少し特異な教育機関となっておりますが、海上保安庁のほとんどの職員は海上保安大学校、海上保安学校を卒業しております。

 業務についてもう少し説明しますと、警備救難業務とは航海の安全を確保するための海上交通の安全確保。洋上救急体制を含めた海難の救助、プレジャーボート・スキューバーダイビング等の海洋レジャーの安全確保。海洋環境保全のための監視取り締まり。阪神淡路大震災等の自然災害における海からの緊急援助救難活動。ナホトカ号等の大規模油流出事故対応の海上防災活動。密航密輸等の国際化する海上犯罪や我が国の領海の秩序を維持する領海警備。および密漁、海事法令違反等の海事法令取り締まり。海上紛争等の警備、ならびに皇族、要人に対する警護等があります。

 水路業務につきましては、国連洋海法条約締結に伴う領海基線、大陸棚、相手国相対国との境界線の測定および確定。地形や水深、海潮流、朝汐についての水路、海象、気象観測等の航海安全確保の為の海洋調査。海図や水路図の刊行、海洋情報の管理提供等です。

 航路標識業務につきましては、昔「よろこびも悲しみも幾年月」という映画がありましたが、その中で灯台守として出て来られましたけれども、その灯台や通称ブイと呼ばれます灯浮標。光波標識や電波により船舶の位置、標識の方向を示す電波標識等の保守点検、運用、警備を行っております。

 また、国際化に対応した海上保安業務が要求されておりまして、近隣諸国の海上保安当局との協議の開催や捜索、救助などの海上保安業務に関する合同訓練を実施すると共に、外国からの技術研究員の受入れ、専門家の派遣、開発調査および開発協力等積極的な協力を行っております。昨年10月エジプトのヘリオポリス市で起こった12階建ビル崩壊事故に日本からも国際緊急援助隊が派遣されました。陸上事故でありましたが、救助隊22名の警察庁、消防庁の職員に混じり4名の海上保安官の派遣もありました。

 海上保安庁は海を仕事場としておりますので主力勢力としましては船艇となります。全国で巡視船と呼ばれる白い海上保安庁の船119隻、ねずみ色の巡視船235隻の他トータルで518隻の船艇。航空機として飛行機26機、ヘリコプター44機を所有しております。

 海上保安庁の職員数は全国で12、000人です。全国で12、000人、決して多くありません。この12、000人で陸上でいう警察業務、消防業務、救急業務を行っています。

 私が現在所属しています松山海上保安部は、愛媛県、広島県、香川県、岡山県の各県および山口県の一部の部分。瀬戸内海に面した海域ということになりますけれども、瀬戸内海を担当海域とする第6管区海上保安本部は広島にあります。第6管区海上保安本部には愛媛県では今治市、松山市、宇和島市、を含めまして10の海上保安部。愛媛県では新居浜にありますが、5つの海上保安署および5つの海上保安分室と広島の航空基地。統制通信事務所1カ所。水路観測所1カ所。航路標識7カ所がありまして巡視船と呼ばれる船が7隻、巡視船37隻および雑船等ありまして船艇がトータル77隻。飛行機が2機、ヘリコプター4機ということで陸上職員6管区全員で491名。船艇職員537名。航空職員37名の合計1、065名が勤務についております。

 ごく簡単に海上保安庁について説明しましたけれども、詳細についてはお手元にお配りしておりますパンフレットの方が詳しいと思います。パンフレットは数が不足していますが必要な方は言って頂ければ取り寄せたいと思います。

 海上保安庁の説明はしましたが、この救友会の目的である救急救命に関することは殆ど話しておりませんので、ここで海上保安庁の業務で救急救命関係に多少なりとも関連する事項を少し話しておきたいと思います。

 先程の業務説明の中で、洋上救急体制を含めた海難救助ということをお話ししましたけれども、これは社団法人日本水難救済会が事業主体となって、海上保安庁、関係行政機関、関係団体の協力の元に昭和60年の発足で、「洋上で傷病者が発生し、医師の救急往診の必要があると認められる場合には水難救済会本部にある洋上救急センターが協力医療機関に医師の派遣を要請するとともに、海上保安庁が巡視船艇、航空機で医師を空輸する。」という仕組みになっておりまして、一般的にはヘリコプター搭載型巡視船により、医師等を現場に急行させ傷病者の発生した船舶等に接近したところでヘリコプターの機動力を生かして一早く現場に到着し、傷病者を吊り上げて巡視船に収容し医師の応急処置を行いつつ、速やかに陸上の医療機関に搬送する。というような対処がなされておりますけれども、はるか沖合における事案につきましては離島の活用や複数のヘリコプター搭載型巡視船を順次配置した飛石輸送等も実施しておりまして、昭和60年〜平成7年末までに332件で医師、看護婦等620名の派遣。平成7年1年間では29件で医師、看護婦等54名の派遣がありました。

 また、海難では救助された者に対して海難現場や医療機関への搬送途中において応急的処置を実施しておりますけれども、救助された者の中には高度の応急処置を必要とする傷病者も居ることから、平成4年4月から救急救命士の資格を有する職員の養成を続けて、6年度に1名が資格取得したのをかわきりに現在海上保安庁全国ではありますけれども6名の救急救命士が配置されております。なお出動件数につきましては、平成4年に14件と数は少ないが引き続き有資格者の養成に努めております。現在配備されております救急救命士は、羽田にある特殊救難基地。これは特殊救難隊といいまして危険物積載船の海難、転覆、火災、沈没船の船内からの人命救助およびヘリコプターから降下して救助する等の特殊な救難業務をする隊で25名います。1隊5名の4チームで1名ずつ救急救命士を配置しているのと、宮城県塩釜にある第2管区海上保安本部塩釜海上保安部のヘリコプター搭載型巡視船「蔵王」に1名。今後もヘリ搭載型巡視船から配備する予定です。残念ながら私が所属している第6管区海上保安部内では、担当区域が瀬戸内海ということで陸地まで距離があまり無いということで洋上救急体制につきましても救急救命士の有資格者の配属は現在のところありません。将来的には徐々に作って行くと思います。

 現在私が所属する第6管区海上保安部は、担当区域が瀬戸内海ということもありまして船舶海難や旅客船における急患輸送はかなりあります。患者搬送が主な任務でありまして、各消防機関や病院等には今までかなりお世話になっておりますし、今後ともお世話にならなければと思っております。

 海上保安庁というのは専門職というのはありません。私も現在救難係長という職をしておりますが、前職は香川県坂出市の巡視船の船長をしておりました。行ったり来たりで次もまた船に乗るかも知れません。専門職というのがありませんので、救友会の会員の皆さんからご指導を頂く機会が出て来ると思います。今後ともよろしくお願い申し上げまして、海上保安庁につての説明を終わらせていただきます。

(顧問 木 村 誉 司)

 私の所にも、「船でのこういう患者がいるがどうか。」とか、「船舶のエンジンで熱傷した。」と運ばれて来たり色々あります。現実にご苦労なさっているのは良く分かりますが、情報の入って来るルートが陸上みたいに何処から入るというのでは無く、あるところを通じて、また聞きのように入りますが海上は現実的にどの様なネットで我々に伝わって来るか。船員の方が病気されてもそうだし、海難事故があっても同じだと思いますが、そういうとき我々に入って来るまでの事をお願いします。

(演者 渡 部 博 文)

 色々方法がありまして、通称瀬戸内海西部通信事務所の通信で行く場合もあります。船舶電話で例えば松山海上保安部に来る事もあります。海の110番、フリーダイヤルを今月から設けましたがそれで6管本部に行く事もあります。それから実際的に何が起こったのかを判断し船を出すので時間が掛かると思います。この前菊間で熱傷をした分については陸上からでしたが、ほとんどが船ですので船から情報が保安部に帰って来て、それで広報をするという形です。

 例えば衝突事件があります。出す船は1隻か2隻です。人数は10人位になります。10人で実況検分をしなければならない。どうしても皆さんに伝わるまでは時間が掛かると思います。これはしょうがないと思いますし、やっと近ごろ船と陸とのFAXという風な形がとられ始めたところですし、航空機については伝送装置はありますが、船との伝送というのはまだやられておりません。松山海上保安部の巡視艇には船舶電話はありません。当庁の専用電話だけです。序々には船舶電話もつけています。

 確かに情報ネット、その辺も考えなければならないのですが、パソコンネットワークが海上保安庁の中だけオンライン化されていますが、少しずつ広がってくると思います。

(顧問 木 村 誉 司)

 以前いろいろな協議の中に、愛媛県は海に非常に近い島を沢山持っている。そういう点で、自衛隊と県が協定を結んでおられましたが、そういう会合の中に海上保安庁も入って色々な面でネットして、そこから色々な所に要求するという事が是非必要になって来るのではないでしょうね。

(演者 渡 部 博 文)  愛媛県の地域防災計画の中につきましては、松山海上保安部も入っております。

(顧問 木 下 研 一)

 ヘリの話が出たときに、広島に基地があって4機ある。と聞きましたがどのくらいの範囲をカバーされているのですか。

(演者 渡 部 博 文)

範囲は6管内全部カバーするとともに、鹿児島、宮崎海域ぐらいまでは出ております。

(顧問 木 下 研 一)

 どうして聞くかと言いますと、陸のほうでもヘリを買うことが1年程前からありまして、それがどうも日本全国、一県一機買うような傾向で、一県一機買いますと朝8時から夕方4時位まで毎日出動可能だけれど、夜はあらかた動かないと。いう事であれは非常に無駄なやり方であって、例えば四国4県で4機買って、職員をそこに集めれば4機要りませんけれども、非常に動き易いしヘリコプターというのはスピードがあるからもっと大きい地域で購入活動すべきというふうに1年前に気づき、ずっと心配していた訳で、海上保安庁と一緒にやれるような事があったらもっといいと思いますけれども、さしあたりそういう心配をしています。ということを申し上げたかったということです。

 物によっては広域で集中して集めたほうが。特にスピードのあるものは。そして職員が沢山の方が。1日中というのが、1年中動けるということがあると思いますので、いつもそういう事を考えてお願いしたいと思います。

(演者 渡 部 博 文)

 分かりました。私の出来る限りの事は努力したいと思います。


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